2016年12月14日水曜日

スタンリー・キューブリック監督 「現金に体を張れ」

すぐ近所に「映画館」という酒と珈琲のお店がある。月例で「鎌倉・夜学 シネマ」という会員制映画講座が開催されている。ジャズの夕べも開かれることがある。昨日、夕飯を家で済ませて午後7時からの上映会に参加させていただいた。マスターが「満席なんてことはないから当日で大丈夫」ということだったので、真に受けて行ったらほぼ満席だった。上映作品はスタンリー・キューブリックの「現金に体を張れ」。大混雑でカウンターに座っての鑑賞したが、モノクロの画面はよく見えた。最後の場面の奇想天外さと映像に思わず「おおお!!」と叫んでいた。久々に映画を観て興奮した。これはすごい。

キューブリック監督のこの映画は1956年に公開され映画人たちに新しい才能の登場を認めさせた作品だそうだ。原題が「the Killing」とあるように後半は多くの死が描かれる。競馬場の金庫襲撃に加担する仲間たちのそれぞれの人物像と生活が簡潔ながらよくわかる。悪い奴らがたくさん出てくる。淡々とした記録映画のようなナレーションにも引き込まれた。どこか今村昌平監督の「復習するは我にあり」と共通しするものを感じた。



 

俳優柄本明さんのトーク 浄智寺「長屋紳士録」上映会

12月8日に湘南遊泳座主催による「みんなの小津会」というイベントがあり、その一部として浄智寺で小津安二郎監督「長屋紳士録」が上映された。上映後に俳優柄本明さんと小津組山内静夫プロデューサーの対談を聞いた。柄本さんはご自分の劇団「東京乾電池」で「長屋紳士録」を舞台化されている。小津さんのご家族もご一緒された。上映後のトークを最前列で聞いた。とても幸福な土曜日の午後。

笠智衆さんは他の小津作品でも、「寅さん」シリーズの御前様としてもなじみがある。飯田蝶子さんも「若大将シリーズ」の雄一のお祖母ちゃんとして知っている。「長屋紳士録」はそういう先入観を打ち破ってくれる。笠さんのうたうのぞきからくりの唄の場面が面白い。上映会ではゲストの柄本明さんのトークの他に、劇団「東京乾電池」で舞台化された「長屋紳士録」から同じ唄の場面も上映された。再演されたら観に行きたい。

柄本さんのトークはとても味わいがあった。ご自分の舞台の話とか出演映画の話から、相米慎二監督の思い出話となった。柄本さんの出演映画として「セーラー服と機関銃」と「二代目はクリスチャン」の予告篇も上映された。どちらも相米監督の作品。柄本さんの思い出話が「あいつは同じ歳だったのに初めから態度がでかいんだ。食えないもんだからその後結婚した女優さんに世話になっていて、撮影所にふらっとやってくる。その女優さんは「またゴキブリが来た」と言っていたんだよ」。「ある日その監督が映画を撮ったという話を聞いてね。それを観てびっくりしたね。才能があると思いましたよ。その女優さんもそれからは「うちの先生が」って言うようになったんだよね」。愛情に満ちた回顧話をお聞きした。