2015年4月7日火曜日

ケイト・ウィンスレットの魅力 米ドラマ「ミルドレッド・ピアス」

2011年のこのTVドラマシリーズでケイト・ウィンスレットはエミー賞を受賞した。それだけの熱演だ。1941年の原作本があり、1945年に映画化された作品のリメイクだ。1930年代の大恐慌時代のアメリカが舞台となっている。ケイト・ウィンスレット演じるしっかり者のミルドレッド・ピアスは夫と二人の娘がいる平凡で幸せな家族の奥さんだった。夫は羽振りが良くてしゃれた車を乗り回すビジネスマンだったが、大恐慌の後の不景気で会社が倒産してしまう。仕事を失ったのみならず浮気をしている夫をミルドレッドは追い出してしまうが、娘二人を抱えて途方に暮れる。リセプショニストなどの仕事を探すが、不景気の時代でなかなか仕事はみつからない。家事手伝いの仕事が見つかりそうになるが、プライドが邪魔をして自分から断ってしまう。

やがて背水の陣でウエィトレスを始めて、レストランを切り回すノウハウを学んだミルドレッドは得意のパイ作りの腕を活かしてレストランを始める。この商売は成功する。富豪で色男のボーイフレンドもでき、ミルドレッドにもようやく運が向いてきたかに見えるとドラマな新たな展開を迎える。最初は末娘の病死。この病死を母親が危篤の子供の側にいなかったせいだと思いこんだ反抗期の姉娘は母親を心の片隅で憎むようになる。そのことを薄々感じる母親は、娘の愛情を取り戻すためにすべてをつぎ込んでも、この娘を何者かに育て上げようとし、選んだのがピアニストの道だった。ミルドレッドのレストラン・チェーンは成功するが、姉娘のピアノの修行は挫折してしまう。この段階で母娘の関係は一度破局を迎える。やがて和解すると、今度は娘を歌手として成功させようと夢中になり、やがては会社の金をつぎ込んでしまう。この辺りからとんでもない裏切りのドラマが連続して息もつかせない展開となる。アメリカ版の「女の一生」だ。


1945年の映画ではジョーン・クロフォードがアカデミー主演女優賞を受賞した。この映画化にあたっては監督はベティー・デイビスの主演を望んだそうだが、脚本を読んだベティ・デイビスは拒否したという話がある。確かにど迫力の物語で優雅さには欠ける話の展開だ。ジョーン・クロフォードで映画化されると作品の迫力のためか人気を呼び、ジョーン・クロフォードにとっては女優としてのキャリアの後半を代表する作品になった。その後、ベティ・デイビスとジョーン・クロフォードはとても仲が悪かったと伝えられているので因縁深い作品なのかも知れない。


ミルドレッドという名前はサマセット・モーム「人間の絆」でも重要な役割を演じる女性の名前でもある。こちらも猛烈な女性だった。「人間の絆」のミルドレッドは、困って世話になるつもりだった主人公に振られた腹いせに、住まわせてもらった部屋をめちゃめちゃに叩き壊して出て行く気位の高さが印象的だが、それに加えて上昇志向が強いこと、自分の美貌に自信があること、意識的であれ無意識にであれ男たちに甘えるところと利用するところは、ミルドレッド・ピアスの物語と共通と言えそうだ。



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