2018年7月28日土曜日

黒木和雄監督「祭りの準備」の上映会

昨晩の小町の研究会で主催者の木村さんの解説をお聞きしながら伝説の映画を鑑賞する贅沢な時間を過ごした。70年代の映画は学生時代に名画座で観たものがほとんど。90年代以降に海外で過ごしている時期に、映画がDVD化される時代がきて心に残る映画は自分の手元におけるようになった。DVDのコレクションというのも不思議なもので、自宅のTVでいつも観るわけでもない。好きな映画のパンフを持っていたいのと同じだ。

久しぶりにこの映画を観て、新たに気が付いたことがあった。主人公の祖父を演じた浜村純が熱演している。この祖父が時間を過ごす網小屋が登場する前半の場面で天井から釣り下がる鉤が大写しされている。この映画にとって重要な小道具だ。華麗な女優陣の中でも原知佐子さん演じた仕立て屋のお母さんが印象的だ。足の悪い息子さんのエピソードがいくつも重要な場面として登場するので大切な故郷の風景の一部なのかと思っていた。この人が映画の主題と深く関わっていることが終盤の空想場面で描かれる。圧倒的だ。名優原田芳雄がお向かいの家の次男として全編を通して登場する。その役名が「中島利広」で、脚本の中島丈博氏の名前と微妙に違うだけのことにようやく気がついた。半自伝的作品と言われるこの作品で、脚本家が描こうとしたのは東京に旅立つ脚本家志望の盾男君だけではなかったようだ。空想の中で故郷に残って不器用に暮らしたであろう自分の物語。どちらも描きたかったはずだ。面白い。
 
 

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