2015年7月16日木曜日

張芸謀監督「単騎、千里を走る」 と 謝晋監督「芙蓉鎮」

張芸謀 (チャン・イーモウ) 監督の「妻への旅路」という映画が今年3月に日本で公開されたという記事を読んだ。文革で引き裂かれた夫婦が長い年月を経て、ようやく再会すると妻は夫を認識できなくなっていたというところから始まる物語らしい。観てみたいものだ。

中国の文革映画と言えば2008年に亡くなられた謝晋(シエ・チエン)監督の「芙蓉鎮」(1986年)の記憶が鮮明だ。この映画が日本で公開された1988年頃は日本の会社で燃料関係の仕事をしていた。中国の大慶油田の輸入交渉に参考になるかも知れないというので、職場の上司たちと観に行った記憶がある。この映画は湖南省の地方都市が舞台だ。屑米を利用して作った豆腐料理屋が繁盛していたことを妬まれ、地方を牛耳っていた党の役人ににらまれるようになったヒロイン夫婦の運命は暗転する。失意の底でも生きる気力を失わないヒロインの健気さが感動を呼ぶ映画だった。罪人として道を清掃しているヒロインが、バレエを踊るかのようにほうきをくるくる回しながら自分も回る場面がとても印象的だった。

張監督は「単騎、千里を走る」で高倉健さんを起用した人だ。一月の有楽町スバル座の健さん追悼上映を友人と二人で観たのが懐かしい。この映画は中国雲南省と日本が舞台で、中国での撮影は張監督が、日本での撮影は降旗康男監督がそれぞれメガホンをとった。健さん演じる主人公は妻を失くして以来、息子との交流が途絶えていた頑固な父親を演じた。その息子が病に侵されて死期が近くなる。ほとんど途切れていた絆を手さぐりするような気持ちで、この父親は何か息子にしてやれることはないかと考える。それで選んだのが息子の研究していた中国の古い仮面舞踊を撮影するため中国の山奥の村を訪ねることだった。仮面舞踊のテーマとなっている「三国志演義」の故事が映画の題名になっているそうだ。はるばる日本からきた主人公を歓迎するために道端にテーブルが出され、村人総出の宴会となる場面が印象的だった。また雲南省の岩山の風景がすばらしい。岩山の道で健さんと服役中の父を待つ幼い男の子が道に迷ってしまい途方に暮れながら、村人たちに見つけてもらうまで一緒に時間をすごす場面がこの映画のハイライトだ。主人公にとってはタイムマシンに乗って、幼い頃の息子に再会したかのような不思議な味わいの映画になった。

ロンドンでも夏になると道端にテーブルを出してご町内の皆さんが料理を持ち寄るイベントがある。最近のニュースで酒宴が大騒ぎに発展した話を聞いてびっくりした。道端の酒宴が、和やかなものになるか、酒を飲み過ぎて大騒ぎになってしまうかはそれぞれのご町内の雰囲気次第ということになる。近所のチズイックに住む友人からも夏の始めに「ストリート・パーティー」があって楽しかったという話を聞いて羨ましかった。中央アジアに住んでいた時でも、コーカサスに出張した時でも、夏は庭にテーブルを出して宴会をやるのは当たり前だった。懐かしい思い出だ。





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