2016年1月31日日曜日

魏徳聖監督 「海角7号」

2016年1月の台湾総統選挙の後で、朝日新聞の文化・文芸欄で、台湾で日本統治時代を評価する本の出版が増えていることについて触れた記事があった。その中で魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督の「海角7号」(2008年)という映画が紹介されていた。この映画には思い出がある。2011年に仕事で出張した時に台湾の方からお土産にとDVDをいただいて知った映画で、日台の友好を象徴するような作品だ。

日本の敗戦で台湾を去ることになる教師が、「小島友子」という日本名を持つ教え子と恋に落ちる。娘は駆け落ちしてでも一緒になろうとするが、引き揚げの混乱の中で男はこの恋を諦める。その言い訳と心境について娘に7通の手紙を書く。しかしその手紙は男の死後まで投函されることはなかった。その7通の手紙の入った日本の文箱が、長い時間が流れた後で今は80歳近いかつての娘のもとに届く物語を、現代の台湾人青年と日本人のヒロインとの恋と並行する形で展開させている。とてもロマンチックな大人の童話である。この作品は台湾で公開されると大ヒットしたそうだ。俳優も挿入されている音楽も感じが良い。

この出張の頃に公開されてポスターが目立った「セデック・パレ」(2011年)という映画が同じ監督の作品で、やはり大ヒットしていることを紹介しないのは片手落ちかも知れない。こちらは日本による台湾統治下で起きた抗日蜂起を描いた作品だ。ウェブで見つけた「見ておきたい台湾映画」リストには両方の作品が紹介されている。台湾と中国本土の間に緊張感が存在する一方で、それがそのまま親日につながるわけでもないことにも注意する必要があるだろう。人々の想いを描いた作品は複雑なのが当たり前だ。それは「霧社事件」を題材とする「セデック・パレ」が必ずしも単純な抗日映画ではないことと共通している。



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