2014年5月に公開された矢口史靖監督の「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」を、その年の夏に帰省する飛行機の中で観た。原作は三浦しおんの「神去なあなあ日常」という小説だ。徳間文庫に入っている。高校を卒業して、三重県の山奥の村で伐採の仕事を経験することになった若者が人々と触れ合う中で、成長していく物語だ。主役の若者が林業に興味を持ち、応募するきっかけとなったヒロインを長沢まさみが演じている。わたしにとっては彼女の魅力を発見した映画になった。この映画の舞台が三重県の山奥であるにもかかわらず、わたしの郷里である新潟県長岡市栃尾を思い出させる二つの理由がある。
第一は、この映画の中に豪快な奇祭が出て来ることだ。今年の正月に帰省して、和島の新年会で飲んでいる時に、「栃尾の奇祭」の話題になった。知らなかったので「どんな祭りですか?」と訪ねると、隣に座っていた人たちが「説明させたいの?」と目で返事するだけで、その場はうやむやになった。3月にその奇祭が行われた時に、友人がFBで教えてくれた。「ほだれ」は「穂垂れ」と書く。地域の豊穣と繁栄を祈る伝統的な行事だ。子宝を願う行事でもあり、新たにお嫁さんになった人たちの中から、祭りへの参加者を募る。「神去りなあなあ日常」に登場する祭りで、山に登る参加者は男性に限られるが、祭りの精神は、穂垂れ祭りと共通だ。
第二は、芦沢明子氏がこの映画を撮影したことだ。この映画は全編を通じて、森の場面が美しい。若手の染谷将太を主役に起用してコミカルな場面を多用しているが、森の映像の美しさによって、さりげなく幽玄な物語に切り替わっていくところがこの映画の魅力になっている。芦沢明子氏は新潟県長岡市の栃尾を舞台にした五藤利弘監督の「モノクロームの少女」、「ゆめのかよいじ」を撮影した人でもある。この2本の映画も緑の風景が圧倒的に美しく、忘れがたい印象を残す。
余談になるが、この映画と同じ三浦しおんの原作で2013年4月に公開された、石井裕也監督の映画「舟を編む」も素晴らしかった。主演の松田龍平も好演だったが、ヒロインを演じる宮崎あおいがキラキラしていた。この人がしばらく前に時代劇大河ドラマの主役を演じたときには気が付かなかった輝き方だった。これで小林薫が脇を固めているので、面白いに決まっている。
0 件のコメント:
コメントを投稿