2014年12月17日水曜日

五藤利弘監督 短編映画「鐘楼のふたり」

「ブーケ~a bouquet~」「鐘楼のふたり」と五藤利弘監督の短編映画を続けてみる機会があった。どちらも富士山・河口湖映画祭のシナリオコンクールのグランプリ作品を五藤監督が映画化したものだ。第6回のグランプリを受賞した2014年公開の「ブーケ~a bouquet~」についてはブログで感想を書いている。

4回のグランプリを受賞した「鐘楼のふたり」 (脚本:吉田忠史)は2012年公開の作品だ。この映画は河口湖畔に実際に存在する「さくや愛の鐘」がモチーフになっている。「さくや」というのは古事記、日本書紀に登場する「木花咲耶姫命」という神話の女神の名前だ。木の花のように美しいと伝えられるとともに、木の花のようにはかなく散る運命を象徴している。

この短編映画ではボクシングをする元気で魅力的なヒロインを佐久間麻由が演じ、ちょっと頼りない恋人を佐藤貴広が飄々と演じている。5年つき合った若いカップルが倦怠期を迎え、別れてしまうべきかと悩んでいるところから映画は始まる。思い出の鐘楼へ向かう途中で道に迷ったことで、残り数か月の命と宣告され、富士山麓の樹海で死に場所を探している中年男と偶然出会う。モロ師岡がこの男を演じた。この3人の俳優さんたちは五藤映画の常連の皆さんである。

この短編映画を観ての印象は、五藤監督の「フェルメールの憂鬱」の印象によく似ている。若いカップルの二人も死期の近い中年男もどうもこの映画の主役という感じではない。映画「フェルメールの憂鬱」で様々な登場人物が集まってくる「フェルメール」という喫茶店が、事実上の映画の主役だったように、富士山麓の樹海と夕陽で黄金色に照り返す河口湖の水面がこの映画の主役のように感じられた。「フェルメールの憂鬱」の感想でも書いたが、モロ師岡がとても良い味を出している。「倍返しだ!」の台詞で大ブームとなった番組でも渋い演技が光っていた。この俳優さんのファンにとっては必見の映画だ。

2014年12月14日日曜日

五藤利弘監督 短編映画「ブーケ~a bouquet~」

キネマ旬報の12月上旬号に五藤利弘監督の映画「花蓮~かれん~」が出ていた。郷里である長岡市栃尾を舞台にした青春映画連作を観て以来、この監督の作品に注目している。地元長岡を中心に熱心な五藤監督ファンの輪も広がっている。若手スターを起用してスターダムに押し上げていく名手でもあるこの監督の今後の作品は楽しみだ。石橋杏奈は「ゆめのかよいじ」に主演した。「花蓮」にW主演したきたきまゆと三浦貴大も良い。キネマ旬報は学生時代から行きつけの喫茶店に置いてあるのを読ませていただいた。懐かしい。

表題の映画「ブーケ~a bouquet~」(2014年2月公開)に主演しているのが、「花蓮~かれん~」で三浦貴大が演じたレンコン農家青年の母親役を演じた円城寺あやだ。この短編映画はセリフのやりとりが面白い。美しい映像と寡黙な登場人物の多い五藤監督作品にしては珍しいと思ったら、脚本は。この作品で富士山・河口湖映画祭でのシナリオ・コンクールでグランプリを取った西史夏氏だ。円城寺あやのセリフに迫力がある。娘役を演じた右手愛美も魅力的だ。

まるで三途の川のような不思議な湖の場面から映画は始まる。20年前の水難事故で親をなくしたヒロインと、片親の少女がお互いに壊れたかけらを持ち寄って、共に生きていこうとする姿が描かれる。この少女に円城寺あや演ずる女性を魔法使いと呼ばせているのが印象的だ。再生と希望の物語には少しの魔法が必要かも知れない。彼岸と此岸の間に存在するスペースとしての水面の使いかた、抒情的な音楽、濃厚な人の死の記憶、再生への願い。これらは五藤監督の「ゆめのかよいじ」の世界であり、「モノクロームの少女」の世界だ。コンクールグランプリの脚本を使いながら、五藤ワールドが再現されている。