2015年1月9日金曜日

五藤利弘脚本作品  「The Milky Way」

五藤監督のことを「モノクロームの少女」(2009年)と「ゆめのかよいじ」(2012年)というどちらも郷里の越後長岡(栃尾)を舞台にした抒情的な作品でデビューした若手監督だと思っている人も多い。監督はわたしとそう大きく年齢が違うわけでもないし、シナリオ・ライターとしてはベテランだ。シナリオ・ライターとしての活動時代の注目作品が1999年の「The Milky Way」である。同年のピンク映画ベストテンの5位となり、翌年のアテネ・フランセで企画上映会では河瀬直美、是枝裕和、黒沢清など勢いのある監督の作品と並んで話題になった。この作品を観る機会があったので、感想をまとめてみた。

「ピンク映画」というとびっくりする人もいるだろうが、青春映画の名作で少しも桃色でないなどということは稀だ。わたしの好きな映画で言えば黒木和雄監督「祭りの準備」、根岸吉太郎監督「遠雷」などはかけらどころか、真っ向からの堂々たる桃色映画でもある。その上で青春映画の傑作であることは広く映画ファンが認めるところだ。五藤監督が「青春Hシリーズ」で撮った「スターティング・オーヴァー」と「愛こそはすべて」も青春映画の佳作である。五藤監督ファンとして嬉しいのはこの2本の作品がとてものびのびと撮られていることだ。それぞれの作品における五藤監督のユーモアと遊び心については、別にブログで書いた感想にまとめているのでご一読いただきたい。

「The Milky Way」は筋金入りのピンク映画である。前半は古き良き日活作品を観ているような妙な懐かしさがある。後半に入ると映画のヒロインである小説家がその作品の中に入り込み、もう一人のヒロインと対話し始める。難解なフランス映画のような、寺山修司監督作品のようなと形容の仕方はいろいろあるだろうが、面白い映像だ。二人のヒロインが交互にクローズアップされる場面、海辺でリヤカーを押しながらドラえもんに出て来るような別の世界へつながるドアなど魅力的な場面が連続している後半はとても面白い。ピンク映画の製作という枠組みの中で自由にやりたいことを試してみるという多くの映像作家たちが経てきた道なのだろうと感じた。


この映画でもう一つ思い出すのがウディ・アレン監督の「カイロの紫のバラ」(1985年)だ。この映画ではミア・ファロー演じる生活に疲れた人妻が映画の中の虚構の人物に恋をする。やがて現実と虚構の世界を隔てていたスクリーンを飛び越えてあちらの世界とこちらの世界で登場人物たちが対話をし始める。「The Milky Way」では小説家と登場人物という形で、この構造が採用されている。この点でかなりハードボイルドなピンク映画が、実は「ゆめのかよいじ」を代表とする五藤ワールドに連なる作品であることに気がついた。故郷映画、青春H映画、美少女コンテスト映画とこのところ五藤監督の様々な作品を観る機会があったが、そのどれをも通じて一貫した基調音が流れているところが五藤作品の魅力だ。




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