2015年3月10日火曜日

衣笠貞之助監督「地獄門」 遠藤盛遠とその後の文覚上人のこと

衣笠貞之助監督は1953年に映画「地獄門」でカンヌ国際映画祭のグランプリと米アカデミー賞名誉賞と衣装デザイン賞を取っている。書店のDVDコーナーで、この映画を何気なく手に取り、後ろカバーの解説を読んでいて驚いた。これは「袈裟と盛遠」の物語でもある。ヒロインの袈裟を京マチコ、ヒロインにひたすら横恋慕する侍を若い長谷川一男が演じている。映画の原作は菊地寛の「袈裟と良人」という物語だ。

芥川龍之介の「袈裟と盛遠」は新潮文庫「羅生門・鼻」の中に入っている。2008年の夏に、ロシア語訳のMP3をペテルスブルクで見つけて以来、気になっている。同じ歴史上の物語を題材としながらも、2冊の題名は異なっている。菊地寛はストーカーとなった侍に殺された美女とその夫に焦点をあてた貞女物語を書いた。芥川龍之介の「袈裟と盛遠」は殺された美女と殺した若武者の凄絶な心理ゲームを描いたものだ。芥川の短い物語には、黒沢明監督が映画化した「藪の中」と共通するものがある。


事件を起こした若武者盛遠は当時19歳だったとされている。罪を反省した盛遠は死罪を免れると、出家しやがて文覚上人となり、歴史に名を残している。神護寺、東寺、東大寺、江の島弁財天などの修復にも貢献したそうだ。ウィキペディアなどによると出家以前の盛遠のことが書かれているのは「源平盛衰記」で、その後伊豆に流され、その地で出会った源頼朝に平家追討を勧めた人だとされている。とても面白い人物だ。手塚治虫もこの人に興味を持ったようで「火の鳥 乱世編」の中に登場させている。





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