2015年4月6日月曜日

ラッセ・ハルストレム監督 「砂漠でサーモン・フィッシング(Salmon fishing in the Yemen)」

ラッセ・ハルストレムというスエーデンの映画監督がいる。1985年の「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」、1999年の「サイダーハウス・ルール」、2000年の「ショコラ」と佳作を作り続けてきた人だ。「サイダーハウス・ルール」のトビー・マグワイアにしても、「ショコラ」のジュリエット・ビノシュ」にしても他にたくさんの出演作があるが、彼らがもっとも魅力的に輝いている特別な映画と言えるだろう。

この監督による2011年の英国映画が「砂漠でサーモン・フィッシング」だ。イエメンの砂漠にダムを造ってサケを放流し、やがては砂漠を緑化したいと夢見るイエメンの金持ちがいて、主人公である水産専門家の博士とコンサルタントのヒロインがその夢の実現に努力する。最初はコメディにしか思えないが、このイエメンの金持ちがしきりに「信じることーfaith」を強調するあたりでなにやら映画は神秘的な雰囲気を帯びてくる。この辺りが魔法のような効果でチョコレートが人間たちを元気にした映画「ショコラ」の感じによく似ている。


主人公の博士にはジュネーブに赴任したキャリア・ウーマンの妻があり、ヒロインにはアフガニスタンで行方不明となっている恋人がいる。さあ、どうなるのか?と観客をはらはらさせながら、砂漠の中のダム建設も進んでいく。やがてヒロインの恋人がアフガニスタンの戦場から奇跡の生還をとげると、博士の恋は終わってしまうのだろうかと観客は感情移入する。そう思わせてからの最後のひとひねりが面白い。主役の二人が運命の出会いをすることによって、それまでの組み合わせが壊れてしまうあたりでほろ苦さは残る。単純なおとぎ話を装っているが、かなり深い話なのかも知れない。


二つのカップルがある事件をきっかけにばらばらになり、新しいカップルが生まれる物語と言えば、有名なロシア映画「運命の皮肉」を思い出した。モスクワとサンクトペテルスブルクでそれぞれに新年を迎え、結婚に踏み切る予定だった大人のカップル2組が、奇想天外な理由で場所が入れ替わり、元に戻ろうとして大騒ぎするが、やがて二人は運命の出会いをしてしまったことに気がつく。すべての出来事が大晦日に起きるので、今でもこの日になると旧ソ連圏の国々のテレビで放映される伝説の映画だ。このイエメンの夢物語とどこか似ている。




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