2015年4月1日水曜日

ロブ・ライナー監督 「The Bucket List」

この2007年の映画はしばらく前にFBグループで話題になった。「The Bucket List」は「死ぬ前にやりたいことのリスト」くらいの意味だ。長い邦題「最高の人生の見つけ方」がついている。映画好きのFB仲間が邦題が気に入らないと文句を言っていたが同感だ。イタリア映画の傑作「The Best Offer」に「鑑定士と顔のない依頼人」という邦題がついたのと同じくらいの原題からの離れ方だ。この意味不明の邦題になったのは、英語の原題を和訳するのが難しかったからだろう。英語で「kick the bucket」は「死ぬ」ことを意味する言葉だが、その由来を調べると英文の辞書には2説出ている。一つは首を吊って死ぬ時にバケツを台に使うからで、もう一つは、バケツというのが昔農場で豚を屠殺する時に吊るす梁を示す言葉で、死ぬ前に豚が暴れて梁を蹴るところからきたというものだ。バケツを台にするのは自殺の時だから、梁を示すという説の方がもっともな感じがする。

この映画の話は単純で、まるでハリウッド版のイソップ物語だ。モーガン・フリーマン演じる主人公は読書が趣味で、博識のクイズ名人で、黒人で、自動車修理工で、若い頃に恋女房に子供が出来て大学をあきらめ、歴史の勉強をする夢も諦めて生きてきた男だ。妻に愛され、子供たちに恵まれ、孫たちにも恵まれているが、どこかで自分の人生を「これで良かったのだろうか」と考えている。今更考えても仕方がない。彼はすでに老人であり、ガンと宣告され余命数ヶ月だ。ジャック・ニコルソン演じるもう一人の主人公は裸一貫からたたき上げて大富豪になった白人で、何度も結婚したが、同じ回数だけ離婚もしている。一人で自由にやりたいことをやり、すべてに成功して欲しいものは何でも金で買える身分だ。娘も孫もいるのに会えないことを寂しく思っているが、今更考えても仕方がない。彼もすでに老人で、ガンと宣告され余命数ヶ月だ。

生きてきた世界も境遇も大きく異なる二人が、同じようにガンと宣告され余命数ヶ月と宣告されたところから、このハリウッド版のイソップ物語は始まる。二人はガンの化学療法でお互いが苦しむ姿を見ている内に共感し合い、友だちになる。やがて「バケツ・リスト」を作り、なんでもやりたいことをやってから死のうと決めて、大富豪のプライベート・ジェットで世界の果てまで旅に出る。スカイ・ダイビング、夢のレーシングカー、ピラミッドへの旅、万里の長城でバイクで走る、ヒマラヤへの旅と手当り次第に、これまでに夢見ていたことを叶えていくが、最後にそのリストを達成することになるためには、一番欲しいが、一番怖れていたものに直面する必要があった。物語は単純明快で「ハリウッド的」かも知れない。それでもこういう映画を観て良い気持ちになるのは悪くない。

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