2015年7月24日金曜日

小林正樹監督 「人間の条件」

新潟県人会のIさんとワインを飲みながら好きな映画の思い出になった。その時に話題になった映画(小林正樹監督、1959-1961年)だ。新珠美千代さんが素敵だったという点でも意見が一致した。学生時代に新宿のオールナイト上映で観た映画だ。第1部から第6部までを観るには、ほぼ10時間かかる大作だ。学生時代に観た映画として記憶の片隅に放ってあった。岩波現代ライブラリーで原作が読めるようになったので、さっそく買って書棚に置いてある。

この映画を思い出したのは、今年になってから哲学者ハンナ・アーレントを描いた映画を観たのがきっかけだった。このドイツで製作された「官僚的な組織の中で命令に従い、思考を停止することが悪につながる」というアーレントの主張を描いた映画を観て、五味川純平原作の映画「人間の条件」を思い出した。仲代達矢演じた主人公の梶は、日本が支配する満州国で良心的な管理者として生きることを希望して、国策会社の経営する鉱山に赴任する。彼は「極悪人」ではないし、「考えることを停止できる人間」でもない。自分の良心と非人間的な植民地的経営との間で板挟みになり、苦しみ抜く


この映画で圧倒的に印象に残るのは宮口精二演じる王亨立が、主人公梶に語りかける場面だ。日本軍の軍需をまかなう鉱山の経営にあたって「人間的」であろうとする主人公はとうとう組織に逆らう行動を取ることになる。それまでは植民地の経営側の「良心的な高官」だった主人公は、自分の良心に従うことを決める。梶は兵役免除の特権を失い、国策に批判的な危険分子として、兵役に就くことになる。それは愛する妻と引き裂かれるような別れを意味する。この映画はまだそこでは終わらない。一兵卒としての梶が軍隊の苛酷さを経験し、戦場での生き残りのための辛酸を舐めた後で、満州の荒野の雪の中で死んでいくことになる。自分の心を試されるような気がする怖ろしい映画でもある。


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