2015年8月19日水曜日

加藤武さん追悼 今村昌平監督「豚と軍艦」の思い出

故郷長岡市出身の五藤利弘監督の「モノクロームの少女」でモノクローム写真の女性の父親役を演じた加藤武さんがご逝去された。ご冥福をお祈りいたします。加藤さんが演じたのは栃尾の造り酒屋のご主人の役だ。この場面が撮影されたのは、地酒「越乃景虎」で名高い栃尾の諸橋酒造だ。新潟県長岡市の奥座敷とも言うべき栃尾は有数の豪雪地帯として知られている。春になると緑の棚田が広がり、秋は黄金色の稲穂が美しい。栃尾は上杉謙信が幼少期を過ごした土地でもある。景虎は上杉謙信が若い頃の名前だ。「越の景虎」は五藤監督の栃尾3部作の上京篇とも言える映画 「スターティング・オーヴァー」 にも登場する。

国際開発関係者の集まりでご一緒しているK先輩が、2011年秋の三越劇場での新内の公演に出演されたのを見に行った時に、加藤さんはゲスト出演されていた。渋い美声だった。去年のW文春連載の春日太一という人の「木曜邦画劇場」というコラムで、加藤さんが演じた主要作品として「豚と軍艦」が紹介されていた。年末にロンドンの老舗書店フォイルズのDVDセクションで今村昌平監督「豚と軍艦」と「盗まれた欲情」(2本で1枚)、「人間蒸発」を見つけて買っている。思いがけないクリスマス・プレゼントだった。

「豚と軍艦」は懐かしい映画だ。都営三田線の白山駅の近くに「映画館」というジャズ喫茶があった。場所は変わったが今もあるはずだ。親切なおばさんがほとんど一人で切り盛りしていた。夜になると息子さんであるマスターが来るが、来ないときもあった。マスターは映画の助監督だったので忙しい時はお店どころではなかった。昼間のお店がヒマな時には珈琲一杯で何時間いても追い出されないどころか、時々 「ついでだから食べなよ」 とスペシャルメニューが出てきた。中島みゆきの「店の名はライフ」という歌がある。「最終電車を逃したと言ってはたむろする。。。」。そういう感じの店だった。


この喫茶店では月例くらいで映画の上映会があった。マスターの好みがとてもはっきりしていた。「豚と軍艦」、「からゆきさん」(今村昌平監督)、「じゃぱゆきさん」(山谷哲夫監督)はこの店の上映会で観た。「豚と軍艦」は若くてきらきら輝いている頃の長門裕之の主演作品だ。ヒロインは吉村実子。丹波哲郎、加藤武、小沢昭一など重厚な脇役陣がすごい。

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