2014年10月19日日曜日

五藤利弘監督「フェルメールの憂鬱」 モロ師岡の魅力

2014年10月の「愛こそはすべて」の劇場公開に続いて、12月には新作「ゆめはるか」の公開などでメディアで取り上げられている五藤利弘監督はわたしの郷里である新潟県長岡市の出身だ。11月の初めの長岡アジア映画祭で同監督の作品「花蓮~かれん~」と「スターティング・オーヴァー」(栃尾映画の上京篇)が上映予定となっている。この監督の活躍が目立つ秋だ。

五藤監督の2012年の映画「フェルメールの憂鬱」を観る機会があった。映画はバー「フェルメール」でモロ師岡演じるマスターと森下悠里演じるヒロインの会話から始まる。深夜のバーに托鉢僧がいて、ゲイのオジサンを演じる村野武範がいて、パソコンおたくのニートがいる。しばらくすると大桃美代子も登場する。2009年の「モノクロームの少女」に出演した五藤組の俳優陣の総登場だ。これは面白そうだ。

場面が変わるとヒロインの寝起きの場面でグラビアアイドル森下のショットが続く。それから若いお兄さんが登場する。どこかで見た顔だ。セリフを聞いているうちに「あれ、ヒロシだ」と気がつく。そこからヒロシ演じるリストラ男とヒロインを中心に隠された名画の発掘の話が展開する。この部分を取り上げてこの映画は「フェルメールの絵をめぐるドタバタ・コメディ」というコピーで紹介されている。名画の発掘が失敗に終わったあたりからこの映画の本当の物語が展開する。

実はこの映画はドタバタ喜劇だけではない。「ゆめのかよいじ」から一貫する五藤ワールド路線の映画でもある。話の筋はさておき、この映画の本当の主人公は「フェルメール」という酒場なのだ。青春時代にむやみと深夜まで居続けた酒場のことを思い出した。五木寛之の「こがね虫たちの夜」に出てくるような、「深夜食堂」で小林薫がカウンターにいるような店だ。そういう店が白山にもあった。そういう深夜の酒場のマスターの雰囲気をモロ師岡がとても良く出している。モロ師岡という名前を知らない人もいるかも知れないが、多くの映画やドラマに登場する名優だ。新しいところでは「半沢直樹」がある。大阪西支店で半沢課長を支える職人気質の係長を演じた人だ。NHK大河への出演も多い。もっと遡ると1998年の向田邦子ドラマ「終わりのない童話」にも刑事役で出演している。「フェルメールの憂鬱」はドタバタを装ってはいるが、当代きっての助演男優を主役にした渋い映画だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿